「求人を出しても、いい人がまったく来ない」。2026年のいま、そんな声をあちこちの経営者から聞きます。人手不足倒産は過去最多を更新し、求人を出して”待つ”だけでは、欲しい人材にはなかなか出会えません。
でも、考えてみてください。あなたが本当に採用したい優秀な人は、いま何をしているでしょうか。——たいてい、もう他の会社で活躍しています。今日は「本当に欲しい人材は在職中である」という前提に立って、その人たちをどう動かし、入社までの現場をどう守るかを、中小企業の目線でお話しします。
本当に欲しい人材は、たいてい「在職中」
本当に欲しい人材は、たいていの場合もう他の企業で活躍しています。きちんと評価もされているから、基本的に転職活動などしていません。つまり、本当に欲しい人材=在職中、というわけです。
逆に言えば、すぐに退社できるような人材であれば、いまの会社にとっても代替可能なレベルということ。転職市場でいつでも動ける人ばかりを追いかけていては、本当に欲しい人には届きません。いま転職を考えていない「転職潜在層」にどう出会い、どう心を動かすか。ここが採用の分かれ道です。
「待つ採用」から「動かす採用」へ
求人媒体に載せて応募を待つのは、いわば「いま動いている人」だけを対象にした採用です。売り手市場では、この土俵に人が集まりにくい。だからこそ、こちらから在職中の人にアプローチする「動かす採用」への発想転換が要ります。中小企業でも取り組める代表的な3つを挙げます。
- スカウト(ダイレクトリクルーティング): データベースやSNSで、こちらから「あなたに来てほしい」と直接声をかける。転職潜在層に届く、いまや王道の手法です。
- リファラル採用(社員紹介): 自社の社員から、信頼できる知人を紹介してもらう。人柄が分かった状態で出会えるため、定着率も高くなりやすい。
- カジュアル面談: いきなり「選考」ではなく、まずはお茶を飲むような気軽な対話から。転職を決めていない人でも「話だけなら」と会ってくれます。
いずれも共通するのは、「応募を待つ」のではなく「関係から始める」という点です。派手な広告費をかけられない中小企業ほど、この地道な接点づくりが効いてきます。
「早く欲しい」でも、妥協採用は絶対にNG
ここで一つ、釘を刺させてください。「忙しくて、すぐにでも人がほしい!」——その気持ちは痛いほど分かります。でも、正社員の採用で妥協採用だけは絶対にNGです。
面接や適性検査をきちんと行い、会社も本人も”相思相愛”の状態で採用しなければ、結局は早期退職を招きます。焦って採った一人が、かえって現場を疲弊させることも珍しくありません。「誰でもいいから」ではなく「この人だから」で採る。その判断軸については、面接の”判断軸”が会社を守るという記事もあわせてお読みください。
入社までの”待つ間”に、今いるスタッフを守る
在職中の優秀な人ほど、すぐには退社できません。引き継ぎもあり、入社までに数か月かかることもある。つまり、本当に欲しい人材ほど、待つ時間が必要なのです。
その”待つ間”、忙しさのしわ寄せは、今いるスタッフに向かいます。ここで大切なのが、今いるスタッフの「疲弊対策」。新しい人が来るまでの辛抱、と現場任せにしていると、思わぬところで綻びが出ます。
いちばん怖いのは「連鎖退職」
退職による補充採用でいちばん怖いのが、退職が退職を呼ぶ「連鎖退職」です。一人が抜けて残ったメンバーの負担が増え、それに耐えかねてまた一人辞める——この悪循環に入ると、採用がまったく追いつかなくなります。
連鎖退職を防ぐ第一歩は、辞めた人が”本当は”何に不満だったのかを直視すること。人は退職理由の本音を、なかなか会社には言いません。この点は辞めた社員が友人にだけ語った”本音の退職理由”の記事で詳しく触れています。残るスタッフの負担と気持ちの両方に、早めに手を打つことが肝心です。
助っ人に「短期・パートタイマー」という選択肢
そこで有効なのが、少しだけサポートしてくれる「短期」「パートタイマー」の力を借りることです。「少しの間だから」と今いるスタッフだけで乗り切ろうとする会社が多いのですが、その我慢が連鎖退職の引き金になっては元も子もありません。
実際、株式会社採用と育成の関連会社である福岡労務経営事務所でも、「短期・週2日程度」という求人にすぐ8人の応募があり、感じの良いパートタイマーさんが現場をしっかり支えてくれました。彼女がいなければ、大切な既存スタッフはもっと疲弊していたはずです。「正社員が入るまでのつなぎ」を先に用意しておく——この一手が、今いるチームを守ります。
最後は「在職中の人に選ばれる会社」になれるか
「先生、うちみたいな小さい会社に、そんな優秀な人が来てくれますかね」。よく、こう聞かれます。でも大丈夫。在職中の人がわざわざ動くのは、給料の額だけではありません。「この会社で何を大切にしているのか」「自分はここでどう成長できるのか」——その物語に惹かれて、人は動きます。
逆に、その”想い”が言葉になっていない会社は、どれだけスカウトを送っても響きません。何を大切にする会社なのかを言語化することが、実は最強の採用力になります。この点は「理念なき採用」が人材不足を加速させるという記事で掘り下げています。在職中の人材を動かすのは、条件ではなく”共感”なのです。
まとめ:在職中の人材を採るための3つの要点
- 「待つ採用」から「動かす採用」へ。本当に欲しい人材は在職中。スカウト・リファラル・カジュアル面談で、転職潜在層とまず関係をつくる。
- 焦っても妥協採用はしない。相思相愛で採ることが、早期退職と連鎖退職を防ぐ最短ルート。
- “待つ間”の現場を守る。短期・パートタイマーで既存スタッフの疲弊を抑え、連鎖退職の芽を摘む。そして「選ばれる会社」になるために、自社の想いを言葉にする。

