つまり「指示されないと動けない部下」をつくるのは、無能な上司である
上司としてチームや部下を管理する中で、「指示されないと動けない部下」という問題に直面することは珍しくありません。
この問題を解決するための鍵は、「自己決定理論」にあります。
この理論は、内発的な動機づけを通じて人々がより自立した行動を取るようになることを説明します。
このブログでは、自己決定理論を基に、上司が部下を自立した社員に育て上げるために何を学び、どのように行動すればよいかを探ります。
自己決定理論とは
自己決定理論は、人間が内発的に動機づけられた行動をとる際には、自律性、有能感、関連性の3つの基本的な心理的ニーズが満たされている状態であると提唱します。
これらのニーズが満たされると、人は自発的に行動し、高いパフォーマンスを発揮するようになります。
自立社員を増やすために、上司が学ぶべき3つのコツ
1 自律性の促進
部下が自分の仕事に対するコントロールを持てるようにすることが重要です。
これを実現するためには、部下に選択肢を提供し、自分で意思決定をする機会を増やしてください。
指示を出す際にも、その理由や背景を説明し、部下がその意味を理解できるように努めましょう。
2 有能感の強化
部下が仕事を通じて自身のスキルや能力を発揮し、達成感を味わえるようにサポートします。
小さな成功体験から始めて、徐々に難易度を高めることで、部下の自信と能力を同時に育て上げることができます。
3 関連性の確立
部下がチームや組織内で重要な一員であると感じられるように、彼らの貢献を認め、感謝の意を表現しましょう。
また、個々の部下との関係を深めることで、彼らがチームの一部としてのアイデンティティを感じられるようにします。
「事例で学ぶ3つのコツ」
開発部門
●チームリーダー高橋さん
●エンジニアの木村さん
状況
ソフトウェア開発部門で働くエンジニアの木村さんは、新しいプロジェクトに配属されましたが、自分の役割やチーム内での位置づけについて不安を感じていました。
チームリーダーの高橋さんは、木村さんの能力を信じており、彼がチームに溶け込み、高いパフォーマンスを発揮できるように支援したいと考えていました。
実践方法
- 自律性の促進
- 具体例
高橋さんは、木村さんにプロジェクトの中で取り組むべきタスクリストを提供しましたが、どのタスクから手を付けるか、どの技術を使って問題を解決するかは木村さんに選択させました。
また、高橋さんはタスクの選択理由や技術選定の背景を説明し、木村さんが自分の判断に自信を持てるよう助言しました。
- 具体例
- 有能感の強化
- 具体例
高橋さんは、木村さんが完成させたタスクに対して、具体的かつ建設的なフィードバックを提供しました。
初期の簡単なタスクから始め、徐々により複雑な問題へと進むことで、木村さんは自分のスキルが向上していることを実感しました。
また、プロジェクトミーティングで木村さんの貢献を称賛し、他のチームメンバーにもその成果を共有しました。
- 具体例
- 関連性の確立
- 具体例
高橋さんは、木村さんがチームの一員として重要な役割を担っていることを定期的に強調しました。
例えば、チームミーティングの際には、木村さんが解決した問題がプロジェクトにどのように貢献しているかを具体的に述べ、木村さんの努力がチームの目標達成に不可欠であることを認めました。
また、チームビルディングの活動を通じて、木村さんと他のメンバーとの関係を深め、チームとしての一体感を育みました。
- 具体例
効果
これらのアプローチにより、木村さんは自分の役割において自立することができ、自信を持ってタスクに取り組むようになりました。
有能感の強化と関連性の確立により、彼のモチベーションは大幅に向上し、チーム内でのコミュニケーションも活発になりました。
最終的に、木村さんはプロジェクトにおいて重要な貢献を果たし、チーム全体の成功に貢献しました。
「事例で学ぶ3つのコツ」まとめ
この事例は、上司が自律性の促進、有能感の強化、関連性の確立の3つの鍵をうまく使って部下を支援する方法を示しています。
木村さんのような部下を持つ上司がこれらの原則を実践することで、部下は自分の能力を最大限に発揮し、チームや組織全体の目標達成に貢献できるようになります。
自律性の促進は部下に自己決定の機会を提供し、有能感の強化は成功体験を通じて自信を育み、関連性の確立はチーム内での彼らの位置づけを明確にすることで、彼らがより価値ある貢献をするための動機付けになります。
高橋さんのような上司が部下に対して適切なサポートと認識を示すことで、部下は自分の職務においてより積極的かつ効果的に行動できるようになります。
この事例から学べる重要なポイントは、部下が自分の仕事とチーム内での役割において、自律的に行動し、自分自身を有能と感じ、所属感を持つことができる「環境を作り出すことの重要性」です。
このような環境は、部下だけでなく、上司にとっても大きな利益をもたらします。
部下が自立し、自発的に動くことで、上司はより戦略的なタスクやチーム開発に注力できるようになります。
また、チームメンバー間の信頼と協力が深まることで、より革新的で効率的な作業プロセスが促進され、組織全体のパフォーマンス向上につながります。
自己決定理論を活かせる「優れた上司」の4つの行動
1 対話を重視する
定期的に部下との1対1のミーティングを設け、彼らの意見や感じている課題を聞き出しましょう。
また、自分の考えや部下の成長に対するビジョンを共有することで、双方向の信頼関係を築くことができます。
2 権限の委譲
小さなプロジェクトやタスクから始めて、徐々に部下により大きな責任を委譲します。
失敗を恐れずにチャレンジする文化を育むことで、部下は自立的な判断と行動を学びます。
失敗を経験しても、その中から学び取れる点を一緒に振り返り、次に活かす方法を探ることが大切です。
3 フィードバックの提供
正直かつ建設的なフィードバックを定期的に提供しましょう。
成功を称賛するだけでなく、改善点があれば具体的かつ前向きな方法で伝え、部下が自分自身を成長させるための手がかりを提供します。
4 自己反省の実践
自らがモデルとなり、常に学び成長する姿勢を示しましょう。
自分の行動や管理スタイルについて部下からフィードバックを求めることで、信頼関係をさらに深めることができます。
自己決定理論を活用して、指示待ち部下を自立社員に変える方法 まとめ
自己決定理論を基に部下を自立した社員に育て上げるためには、上司自身が自律性、有能感、関連性を重視したマネジメントスタイルを実践する必要があります。
部下一人ひとりの内発的な動機づけを理解し、それを支援することで、部下は自分の可能性を最大限に発揮し、チーム全体のパフォーマンス向上に貢献することができるようになります。
部下の自立は一夜にして成し遂げられるものではありませんが、一歩ずつ着実に進めることで、そのプロセス自体が上司と部下双方の成長につながることは間違いありません。
つまり「指示されないと動けない部下」が存在するのは、上司が無能だからなのだ。