期待の力
人間関係における期待の力は計り知れません。
特に職場での上司と部下の関係では、この力が顕著に現れます。
ここで重要な役割を果たすのが「ピグマリオン効果」とその反対「ゴーレム効果」です。
この二つの心理学的現象が、なぜ業績に大きな影響を与えるのか、実例を交えて探っていきましょう。
ピグマリオン効果 ー 期待が高めるパフォーマンス
ピグマリオン効果とは、簡単に言うと「期待されると人はそれに応えようとする」という現象です。
例えば、ある企業のリーダーが部下の能力を高く評価し、その期待を伝え続けた場合、部下は自信を持ち、より高いパフォーマンスを発揮するようになります。
営業チームの事例
背景
この事例では、成績が平均以下だった営業チームに新任のマネージャーが着任しました。
新マネージャーは、チームの潜在能力を信じ、各メンバーが持つ独自の強みや能力を最大限に活用することに注力しました。
実践方法
- 個別面談の実施
マネージャーは、着任早々にチームの各メンバーと一対一で面談を行いました。
この面談の目的は、各自のキャリア目標を理解し、彼らが抱える問題や挑戦について話を聞くことでした。 - 強みに基づいた目標設定
面談を通じて見えてきた各メンバーの強みを基に、個人ごとにカスタマイズされた目標を設定しました。
例えば、コミュニケーション能力が高いメンバーには、顧客との関係構築を重視した目標。
分析スキルが高いメンバーには市場調査や戦略立案を中心とした目標が設けられました。 - ポジティブなフィードバックとサポート
定期的なミーティングでは、達成した成果に対して積極的に称賛を送りました。
また、目標達成に向けて必要なサポートやリソースも提供し、困難に直面したメンバーには解決策を一緒に考え出しました。
結果
このアプローチの結果、チームの売上は前年比で20%以上向上しました。
さらに重要なことは、メンバーたちの職場における満足度と自己効力感が大幅に向上したことです。
彼らは自分の強みが認識され、価値を提供できていると感じるようになりました。
また、個々の進捗を定期的に評価し、ポジティブなフィードバックを受けることで、モチベーションの維持と向上に繋がりました。
ピグマリオン効果まとめ
この事例からわかるように、ピグマリオン効果を通じて高い期待を持って接することで、リーダーは部下のポテンシャルを引き出し、チーム全体のパフォーマンスを向上させることができます。期待を持つこと、それを伝えること、そしてサポートを提供することの重要性が、この営業チームの成功事例を通じて明らかになりました。
ゴーレム効果 ー 低い期待が引き下げるパフォーマンス
一方、ゴーレム効果はピグマリオン効果の反対で、「期待されないと人はそれに沿ったパフォーマンスを示す」という現象です。
ここでの低い期待は、部下のモチベーションを削ぎ、成果の低下につながります。
製造部門の事例
背景
この事例の舞台は、ある企業の製造部門です。
部門長が交代し、新しい上司は前任者と異なり、部下への期待が非常に低かった。
新上司は、部下たちの能力に対して懐疑的で、常に彼らの失敗を前提としたマネジメントを行いました。
どんなマネジメントをしてしまったのか?
- ネガティブなフィードバック
新上司は、部下たちの成果に対して、ほぼ常にネガティブなフィードバックを提供しました。
成功よりも失敗に焦点を当て、小さなミスも厳しく指摘しました。 - 成長の機会の欠如
部下たちは新しいスキルを習得する機会が減少し、自己改善やキャリアアップのための支援も受けられなくなりました。
上司は彼らが成長する可能性を信じておらず、教育やトレーニングに投資する意欲も見せませんでした。 - コミュニケーションの断絶
上司と部下の間のコミュニケーションは徐々に断絶し、部下たちは自分たちの意見や提案を述べることが難しくなりました。これにより、チーム内の信頼関係が損なわれ、協力的な雰囲気が失われていきました。
結果
このような環境下では、部下たちは自己効力感を失い、モチベーションが著しく低下しました。
業績は急速に下降し、生産性が大きく落ち込みました。
さらに、高い離職率が問題となり、経験豊富なスタッフの多くが会社を去ることとなりました。
ゴーレム効果まとめ
この事例から見て取れるのは、ゴーレム効果がいかに強力な負の影響を職場に与えるかということです。
低い期待は、部下たちの自信を奪い、彼らが持つ潜在能力を引き出す機会を阻害します。
結果として、個人のパフォーマンスだけでなく、組織全体の成果にも悪影響を及ぼします。
リーダーシップにおいては、部下たちへのポジティブな期待を持ち、それを適切に伝え、サポートすることが重要です。
それによって、ゴーレム効果を回避し、ピグマリオン効果を促進することができます。
結論 ー 結局、社員も業績も思ったとおりに
ピグマリオン効果とゴーレム効果は、期待がいかに人の行動や成果に影響を与えるかを示しています。
リーダーがポジティブな期待を持ち、それを伝え続けることで、部下は自信を持ち、より良い成果を出すようになります。
逆に、ネガティブな期待はパフォーマンスを低下させ、組織全体に悪影響を及ぼします。
成功したい企業やリーダーは、ピグマリオン効果を積極的に活用し、部下に対する肯定的な期待を持つべきです。
それによって、社員は自らの可能性を最大限に発揮し、企業の業績向上に貢献することができます。