内定者の7割が満足なのに、友人には勧めない理由――内定式で経営者が知っておきたい心理学

満足だけじゃ足りない――内定者意識調査に見る心理学

10月1日は、多くの企業で内定式が行われる日です。この時期になると、経営者からは「うちの内定者フォロー、これで大丈夫でしょうか」という相談が増えます。実は、内定者に「満足していますか」とだけ聞いていても見えてこない、もう一段先の落とし穴があります。

社長「先生、うちの内定者アンケート、満足度はかなり高いんです。なのに、後輩を紹介してほしいってお願いすると、みんな歯切れが悪くて……」

鎌倉「よく聞くお話です。実はこれ、最新の内定者意識調査にも、はっきり数字で出ているんですよ」

目次

「もう一度選んでも、この会社」69.6%。でも「人に勧めたい」は27.6%

マイナビが2026年7月31日に発表した「2027年卒 内定者意識調査」(2026年6月15日〜7月5日実施・内々定を保有する全国の大学生・大学院生1,629名対象)によると、就職活動をやり直しても「もう一度この内定先に入社を決める」と答えた学生は69.6%にのぼります。

ところが、同じ学生に「後輩や友人に勧めたいか」と聞くと、そう答えた”推奨者”はわずか27.6%。満足度との間に、40ポイント以上の開きがあります。

満足度と推奨度のギャップ
また選ぶ
(満足度)
69.6%
人に勧める
(推奨度)
27.6%

出典:マイナビ「2027年卒 内定者意識調査」(2026年7月31日発表)

「自分には合っている」と「人にも勧められる」は、別の話

この調査を行ったマイナビ自身も、「自分には合っているが、他の人にも合うとは限らない」という認識が背景にあるのではと分析しています。ここには、心理学でいう自己呈示理論(エルヴィング・ゴッフマン)に通じる仕組みが働いています。

満足度は、自分ひとりの内側で完結する私的な感覚です。一方「人に勧める」という行為は、他人の前でおこなう公的な振る舞いです。もし勧めた後輩が「話が違った」と感じたら、その評判は勧めた本人にも跳ね返ってきます。だから、心から満足していても、”人前でその会社を推す”という一歩には、もうひとつ別のハードルがあるのです。

満足度=私的な感覚
自分の中だけで完結する評価。誰かに見られるリスクがない。
推奨=公的な振る舞い
他人の前でおこなう行為。相手が失敗すれば、自分の評判にも跳ね返る。

満足度アンケートの数字だけを見ていると、見落とすもの

社長「じゃあ、うちの満足度アンケートは意味がなかったということですか?」

鎌倉「いいえ、満足度は大事な指標です。ただ、それだけで『この会社は選ばれている』と安心してしまうと、次の一歩を見落としてしまうんです。満足度の先にある『人に語れる具体的な理由』まで、内定者の手元に渡っているかどうかがカギになります」

内定者が”誰かに語れる具体”を持てているか

人は、抽象的な満足感だけでは、他人にうまく説明できません。「なんかいい会社だと思う」では、後輩に勧める言葉になりにくいのです。必要なのは、内定者自身が誰かに話したくなるような、具体的なエピソードや数字です。

  • 入社後に任される仕事の具体的な中身(「1年目からこの仕事を任される」という一文)
  • 社長自身の失敗談や、そこからの立て直しのストーリー
  • 先輩社員の「入社前は不安だったが、実際はこうだった」という生の声

中小企業は、この”具体”を作りやすい立場にあります。社長と内定者の距離が近く、日々の仕事の中身も、大企業に比べてずっと見えやすいからです。求人票の言葉を具体的なエピソードに置き換える工夫は、以前の記事でも触れましたが、この考え方は内定者フォローにもそのまま応用できます。

内定式を「証拠を渡す場」に変える

多くの企業にとって、内定式は形式的な儀式で終わりがちです。しかし、この日をただの挨拶の場ではなく、内定者が”誰かに語れる具体”を持ち帰る場に変えることができます。

1
社長のあいさつに”具体的な1人”を登場させる
「去年入社した◯◯さんが、入社半年でこんな仕事を任された」という実例を1つ入れる
2
先輩社員に”入社前と実際”を語ってもらう
不安だったこと・実際はどうだったかを、内定者に直接伝える時間を設ける
3
最初の3ヶ月で任せる仕事を具体的に伝える
抽象的な期待ではなく、入社後すぐに触れる仕事の中身を先に見せる

「満足しています」で終わらせず、”人に話したくなる材料”を渡して送り出す。それが、内定式という一日でできる工夫です。内定通知の伝え方ひとつで承諾率が変わったという以前の記事と同じく、この場面でも言葉の設計が結果を左右します。

この”推奨”は、将来のリファラル採用にもつながる

内定者が入社後、自社を後輩や友人に語れる存在になれば、それは数年後のリファラル採用(社員紹介による採用)の芽にもなります。母集団形成に大きな予算をかけられない中小企業にとって、社員自身の言葉による紹介は、金額では買えない採用力です。内定式で渡した”具体”は、目先の内定辞退防止だけでなく、数年先の採用にも効いてきます。入社後の早期の壁を乗り越える工夫についてはこちらの記事でも触れていますので、あわせて読んでいただくと、内定式から入社後までの一連の流れが見えてきます。

調査結果を、そのまま自社に当てはめすぎない

この調査は、内々定を保有する大学生・大学院生を対象にしたものです。業種や職種、地域によって、内定者が置かれている状況やフォローの手厚さはさまざまで、すべての中小企業が同じ40ポイントの開きを抱えているとは限りません。大切なのは数字そのものより、「満足度と、人に勧めたい気持ちは、別の指標かもしれない」という視点を持つことです。

まとめ

  • マイナビの調査では、内定先への満足度69.6%に対し、人に勧めたい割合は27.6%と大きな開きがある
  • 満足は私的な感覚、推奨は公的な振る舞い――自己呈示理論に通じる仕組みが、この開きを生んでいる
  • 内定式を、内定者が”誰かに語れる具体”を持ち帰る場に変えることが、内定辞退の防止と将来のリファラル採用の両方につながる
よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次