「辞めたい理由」が変わった——将来性より”やりがいのなさ”で辞める若手たち

辞めたい理由が変わった時代 将来性より"やりがい"で辞める若手たち

「最近の若手は、何を考えているのかようわからんのですわ」
先日、顧問先の社長からそう相談されました。真面目に働いてくれているし、給料にも不満を言わない。それなのに、ある日突然「辞めます」と切り出される——そんな経験をした経営者は、決して少なくないはずです。

実は今、その「辞める理由」そのものが、静かに様変わりしています。株式会社リクルートマネジメントソリューションズが発表した「若手の離職実態調査2026」が、その変化をはっきりと数字で示してくれました。

目次

社会人1〜3年目の62.2%が「辞めたい」と思っている

同調査によると、社会人1〜3年目のうち62.2%が「会社を辞めたいと思ったことがある」と回答しました。前回2023年調査の58.8%からさらに微増しており、若手の「辞めたい」は決して一部の特別な人だけの感情ではなく、むしろ多数派になりつつあります。

もちろん、業種や職種、会社ごとに事情は大きく異なりますし、この数字がそのまま「今の若手はすぐ辞めたがる」という決めつけにつながるものではありません。ただ、辞めたいと”思ったことがある”人がこれだけ多いという事実は、経営者として一度は正面から見ておく価値があるでしょう。

「将来性への不安」が消え、「やりがいのなさ」がトップに

興味深いのは、辞めたいと思った理由の中身です。今回1位になったのは「仕事にやりがい・意義を感じない」(21.8%)。2位「給与水準が満足できない」(19.5%)、3位「自分のやりたい仕事ができない」(14.1%)と続きます。

一方、2023年の調査で上位にあった項目は大きく順位を下げました。「会社の将来性に不安がある」は12.3%から4.0%へ、「昇進・昇格が見込めない」は8.1%から2.9%へと、いずれも大幅に減少しています。

「会社が潰れないか」「出世できるか」といった外側への不安が薄れ、「この仕事に意味を感じられるか」という内側の実感が、辞める・辞めないを左右する時代になってきているのです。

なぜ「意味」がこれほど重くなったのか

これは、心理学の「職務特性理論」で説明がつく現象です。この理論では、仕事へのモチベーションを左右する要素のひとつに「有意味感(この仕事には意味がある、という実感)」を挙げています。給料や将来性といった条件がある程度満たされた状態になると、人は「この仕事をやる意味」そのものに敏感になる、という考え方です。

終身雇用や年功序列という”約束”が薄れた今の若手にとって、会社の将来性は、もはや自分の人生を預ける根拠にはなりにくいのかもしれません。だからこそ、「今、この瞬間に何を積み上げているのか」という実感の方が、リアルに響くのでしょう。

「能力を発揮できない」が12位から2位へ急浮上

もうひとつ見逃せないのが、「仕事で能力や持ち味を発揮できない」という理由が、前回の12位から今回2位相当(21.6%)へと急上昇していることです。

「サボりたい」「楽をしたい」のではなく、「自分の力を、ちゃんと発揮したい」のに発揮できていない——そのもどかしさが辞めたい気持ちに直結している、と捉えることもできます。これは以前この連載で取り上げた”静かな退職”とは、実は根っこが違います。静かな退職は”頑張らない選択”、今回のデータが示すのは”頑張りたいのに機会がない”という、もどかしさの表れだと言えるでしょう。

「上司との相性」が定着を左右する

調査ではもうひとつ、興味深いデータが示されています。「上司と仕事の進め方が合っている」と感じている度合いを見ると、離職を考えたことがある人は5点満点中3.3、実際に離職した人は2.8と、明確な差がついているのです。

これは相性の良し悪しというより、「進め方」のすり合わせの問題です。細かく確認しながら進めたい若手に「任せたから」と丸投げしたり、逆に自分で考えたい若手に逐一指示を出したり——悪気なくズレたまま放置されると、それが少しずつ”やりがいのなさ”に転化していきます。

実は、これは中小企業にとって追い風でもある

「うちは大手みたいに立派な将来性なんて示せない」——そう感じる経営者ほど、実はこのデータを前向きに読んでほしいのです。

会社の将来性で若手をつなぎとめる時代が終わりつつあるなら、大企業ならではの”安心感”という武器は、以前ほど絶対的ではありません。むしろ、経営者と若手の距離が近く、任せる裁量を柔軟に調整できる中小企業の方が、「意味」や「発揮の機会」を実感させやすい場面は数多くあります。

「先生、うちみたいな会社に、意味とかやりがいなんて用意できますかね」
そう不安げに聞かれることがあります。私の答えはいつも同じです。「意味は、用意するものじゃなく、伝えるものですよ」。

具体策① 仕事の「意味」を、自分の言葉で伝える

若手にとって仕事の意味は、放っておいて自然に見えてくるものではありません。「この作業が、お客様のどこにつながっているか」「この仕事が、会社の3年後にどう効いてくるか」を、経営者自身の言葉で伝えることが第一歩です。マニュアルの言葉ではなく、経営者本人の実感がこもった言葉であるほど届きます。

具体策② 「やりたいこと」と実務のすり合わせを、1on1でこまめに

「自分のやりたい仕事ができない」という理由が3位に入っている以上、若手が今の業務に何を感じているかを、評価面談とは切り離した場でこまめに聞く仕組みが有効です。本人が友人にだけ語る”本音”は、上司には案外届いていないもの。まずは短く軽い頻度の1on1で、聞く回数を増やすところから始めてみてください。

具体策③ 「進め方」の相性は、放置せず早めに調整する

配属や配置換えの直後は特に、「細かく確認したいタイプか」「任せてほしいタイプか」を早めに言語化してもらい、上司側もそれに合わせて関わり方を調整する。この一手間だけで、”何となく合わない”というモヤモヤの多くは防げます。

こうした関わり方の設計は、経営者おひとりで抱えるには意外と骨が折れる作業です。経営の伴走顧問では、こうした若手との関わり方の土台づくりも一緒に整えています。

まとめ

  • 若手が辞めたいと思う理由は「将来性への不安」から「やりがい・意義の実感」へ移り変わりつつある
  • 「能力や持ち味を発揮できない」もどかしさ、上司との「進め方の相性」も定着を左右する要素になっている
  • 大きな将来性を示せなくても、意味を言葉で伝え、こまめに聞き、進め方をすり合わせることは、どんな会社にもできる
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