「ちゃんとやってくれると思ったのに」
「言わなくても気づいてくれると思ったのに」
社員に対してこんなふうに感じて、イライラしたり、落胆したことはありませんか?
その怒りの奥には、実は“期待”という感情が潜んでいることが多いんです。 これは、社長が陥りがちな「感情マネジメントの落とし穴」でもあります。
“期待”に縛られていた頃の私の話
今だから笑って話せますが、私はかつて相当な“察してちゃん”でした。
恋愛や結婚生活の中で、心の中では「言わなくてもわかってくれるよね?」と思いながら、実は期待でガチガチ。今振り返れば…まー、なかなか性格がこじれてました(笑)
「誕生日ぐらい覚えててくれてもいいのに…」
「LINEの返信が遅い。きっと私への気持ちが冷めたんだ」
「今日は疲れてる私を気づかって、何かしてくれると思ったのに…」
全部、言葉にせずに勝手に期待して、勝手に傷ついて、勝手に怒ってたんですよね。
感情が暴走して、自分でもどうしてこんなに苦しいのかわからなくなることもありました。
でも心理学を学ぶ中で気づいたんです。 「これは相手の問題じゃなくて、私の中の“こうであってほしい”という期待から生まれているんだ」と。
そしてその“期待”をゆるめた瞬間、驚くほど心がHappyになりました。
「期待を放棄する」と聞くと冷たく聞こえるかもしれませんが、実際はその逆。 相手を縛らなくなるから、自由に愛せる。自分自身も、ものすごく穏やかで幸せになれるんです。
そして今では……もう、幸せすぎてしょうがない(笑) 「にやにやしてるけど、何があったの?」って聞かれるほど、毎日が心地よくてたまらないんです。
まー、今思えばめんどくさい女だったなって、自分でも苦笑いです(笑)
相手に期待しすぎないって、こんなにも自由なんだなって実感しています。
社員へのイライラは“社長の期待”から生まれる
この体験、実は社員との関係にも通じていると感じています。
「社員ならこれくらいやって当然」
「もう言わなくても察して動いてくれるでしょ」
…そんなふうに“期待”してしまうことで、社長自身が傷ついたり、怒りを感じたりしてしまう。
でも、それは「期待」が悪いんじゃない。
気づかぬうちに、相手に自分の基準を押しつけてしまっていることがある、というだけなんですよね。
社長の怒りと感情コントロール
心理学の世界でも、「期待を手放す」ことの重要性はさまざまな理論で語られています。ここでは代表的な3つの考え方をご紹介します。
◆① 認知行動療法(REBT):「○○すべき」の手放し
心理学者アルバート・エリスは、人が苦しむのは「〜すべき」という非合理的な信念を抱えているからだと説きました。
たとえば、
「社員はちゃんと報連相すべきだ」
「社会人なら時間通りに出勤すべき」
こういった“理想”が、現実とズレたときに怒りやイライラを生むのです。
でも現実には、「時間通りに出勤すべき」は、ある意味“最低限のマナー”と感じている方も多いと思います。
ここで大事なのは、それを「守らなくていい」という意味ではなく、“できていない現実”にいちいち感情を振り回されない視点を持つこと。
「ちゃんと出勤してほしい。でも、できてない時はその理由を冷静に確認しよう」
そんなふうに少しゆとりをもたせると、怒りに支配されにくくなります。
つまり、「してくれたらいいな」くらいの柔らかい願いに置き換えることが、自分自身を守る感情マネジメントにもつながるんです。
◆② アドラー心理学:「それは誰の課題?」
アドラーは、「他人の課題には立ち入らない」ことの大切さを教えています。
「もっと自分で考えて動いてほしい」
「こっちの気持ちを察して動いてくれたらいいのに…」
と思ってしまうのは自然なこと。でも、それを相手の課題として切り分けて考えることで、無駄な怒りや落胆を防ぐことができます。
「これは私がコントロールする領域じゃない」
と気づけたとき、驚くほど気持ちがラクになるんです。
◆③ マインドフルネスとACT:「今、ここ」に戻る
ACT(アクセプタンス&コミットメント・セラピー)では、
「思考や感情をコントロールしようとせず、ただ観察する」 という考え方がベースになります。
「こうあってほしい」「こうすべきだ」という期待や執着を手放し、“今ここ”に意識を向ける。
「今日も社員が出社してくれた」
「失敗したけど、報告してくれた」
そんな“事実”に心を向けるだけで、社長の心はちょっと落ち着いて、ついでに肩の力まで抜けてきます。
どれも小難しい理論ではありません。けれど、日常で意識するだけで「あれ?なんかラク…」と感じることが増えていきます。
ちなみに、「期待しない」=「どうでもいい」ではありません。 むしろ逆で、相手に執着せずに信じることができるようになるんです。
人って、それぞれ“自分なりの正しさ”を持って生きていますよね。
でも、その“正しさ”を相手にそのままぶつけてしまうと、ズレが生じて、イライラしたりガッカリしたり。
そこで一度立ち止まって、こう問い直してみてほしいんです。
「どうしてこんなこともできないの?」じゃなくて、 「あ、私この人に“こうであってほしい”って思ってたんだな」って。
この“気づき”があるだけで、さっきまでメラメラしていた怒りが「ま、いっか」とふっと冷めていくこともあるんです。
怒らない社長が育てる“心理的安全性”とチーム力
社長が怒ってばかりの職場では、社員は萎縮し、本音が言えなくなります。
でも、社長が“期待の手放し方”を知っていれば、
- 社員との関係が柔らかくなり、
- 本音を引き出せるようになり、
- 自律的に動けるチームが育ちます。
これはいわゆる「心理的安全性」にもつながります。
実際に「社長が怒らなくなったら、社員のミスが減った」「自分で考えて動くようになった」という声はよく聞きます。
感情マネジメントができる社長は強い
“期待”を完全に捨てることは難しいです。 でも、気づいてゆるめることはできます。
そして、その“ゆるめた余白”に、信頼や対話、成長のきっかけが入ってくるようになります。
「期待しすぎない」ことは、「あきらめ」ではなく「自由になる選択」なのかもしれません。 社長の心が自由になることで、社員も会社も、自然と変わっていきます。
怒らない社長、イライラを抱え込まないリーダーほど、実は“強くしなやか”な経営ができるものです。
“期待”をゆるめることは、社長自身の心に余白を生み出し、組織全体の風通しを良くします。 その結果、社員の自主性が育ち、チームの地力も底上げされていく。
これからの時代、組織を強くするのは「コントロール」ではなく、「信頼」と「余白」です。
そんな組織づくりを、あなたの会社でも少しずつ始めてみませんか?

