「あの社長、最近やたら羽振りいいらしいで」
「なんか補助金もバンバン取って、高級車買うて…調子乗ってへん?」
そんな声、経営者なら一度はどこかで聞いたことがあるかもしれません。
嫉妬。それは人間が持つごく自然な感情です。ですが、社長という立場になると、「される側」にも「する側」にもなりやすく、その感情の扱い方次第で、会社の未来が変わってきます。
社長は“嫉妬されやすいポジション”
組織のトップは、成果が見えやすく、自由度も高い。「評価」も「報酬」もダイレクトに跳ね返ってくるため、外から見ればキラキラして見えがちです。
でもその裏で、こう思われることも…。
「なんであの人だけ…」
「うちより後から始めたのに成功してる」
「自分の方が努力してるのに」
これ、心理学では「社会的比較理論」(レオン・フェスティンガー)に基づくものです。
● 社会的比較理論とは?
人は無意識に、自分と“似たような他者”と比較する習性があります。
たとえば
「同じ時期に創業した会社」
「年齢が近い経営者」
「同じ業界・同じ地域のライバル」
こういった“近い存在”が成功していると、心の中でモヤモヤ…。それが「嫉妬」という形で現れるのです。
■「嫉妬する自分」が現れたときの対処法
ある社長がこう言っていました。
「いや〜あいつの成功、祝福したい気持ちもあるけど、正直ちょっと悔しい(笑)」
でも、これが大事なんです。
嫉妬を無理に打ち消すのではなく、「自分にもそういう気持ちがあるな」と認めること。
これは「感情のラベリング」と言って、自分の感情に“名前をつけて認識する”だけで、心の暴走はかなり抑えられると心理学でも言われています。
社長だって、部下に嫉妬することがある
一方で、社長自身が「嫉妬する」場面もあります。
- 自分よりプレゼンが上手な若手
- SNSでフォロワーが急増した社員
- 外部から評価されているスタッフ
「くっそ…アイツ、注目されてんな…」
そんな小さなザワつきが、自分の中に生まれることってありませんか?
● 社会的承認欲求と“自己価値の防衛本能”
実はこれ、「承認欲求」の裏返しです。
人は「自分が一番でありたい」「人から価値を認められたい」という欲求を持っています。特に、長年トップを張ってきた人ほど、その“ポジション”を守ろうとする無意識が働きます。
だからこそ、部下が輝き始めたとき、自分のポジションが脅かされたような気持ちになる。これが“嫉妬”という感情になって表面化するのです。
■ じゃあ、どうすれば?
ある年配の社長が、若手社員の活躍に嫉妬していたとき、奥さんにこう言われたそうです。
「アンタが“先に登った山”のてっぺんを、今あの子が見てるんやろ。立場が違うんやで」
この言葉が心に刺さったそうです。
“自分はもう登った。今は見守る側に回ってもええんちゃうか”と。
嫉妬を否定せず、でもそれに支配されず、次のステージに向かう視点を持つこと。それが、成熟したリーダーの証でもあります。
社内の「嫉妬」は組織を壊すのか?
最後に、少しだけ怖い話を。
組織内で“嫉妬の感情”がうまく扱われないと、知らぬ間に空気が悪くなります。
- 仲間の活躍を素直に祝えない
- 足を引っ張る言動が生まれる
- 「どうせ自分なんて…」という諦めムードが蔓延
これでは、誰も伸びません。
■ 社長ができることは?
- まず自分の嫉妬を認めること(隠さない)
- 人の成功を喜ぶ練習をすること(小さな拍手からでOK)
- 嫉妬の感情に“意味”を与えること
たとえば「自分も負けずにやろう」というモチベーションに変える。
または、「今まで見えなかった課題に気づいた」と受け取る。
嫉妬は“悪”ではなく、“進化”のチャンスなんです。
その違和感は、次の一歩を教えてくれる
嫉妬は、誰にでもある。経営者にも、もちろんある。
でも、それをどう扱うかで、会社の空気はまったく変わります。
もしあなたが、
「最近、あいつのことが気になるな…」
そんな小さなザワつきを感じたとしたら
それは、あなた自身の中に眠る「伸びしろ」が、動き出そうとしているサインかもしれません。
嫉妬を“感じない人”になるのではなく、
嫉妬を“うまく扱える人”になること。
それこそが、これからの時代に求められる、しなやかで強いリーダーの在り方なのではないでしょうか。