「釣り仲間募集」という求人広告の衝撃
「クルーザーを持っているので、釣りに行ける仲間を募集します」
そんな一文から始まる求人広告を、あなたは見たことがあるでしょうか?
これは実際に成功した採用事例の一つです。
特別な福利厚生でも、高額な給与でもありません。
けれど、この“釣り”というキーワードが、ある中小企業の採用力を劇的に変えたのです。
本記事では、このような「趣味」や「共感」を軸にした“共感型採用”の事例をいくつかご紹介しながら、これからの中小企業が取るべき採用戦略について考えていきます。
“採れない時代”に入った中小企業のリアル
多くの企業が「人が来ない」と嘆いています。
特に中小企業においては、知名度や給与条件で大手に勝つのは至難の業。
さらに、求職者側の目も確実に肥えています。
「正社員募集」「社会保険完備」――そんな当たり前の条件だけでは、もはや目に留まらない時代です。
山ほどある求人原稿の中で、「この会社を選びたい」と思わせる理由が必要なのです。
【事例1】釣り仲間募集で応募者が急増!
ある中小企業が出したのは、「クルーザーで釣りに行ける仲間を募集!」というユニークな求人。
実はこの会社、社長が大の釣り好きで、クルーザーを所有。社員と共に釣りに出かけるのが月1回の恒例行事でした。
そこで思い切って「釣りが好きな人、大歓迎!」と打ち出したところ、なんと応募数が3倍以上に増加。しかも、採用後の定着率も非常に高かったといいます。
「同じ趣味の人と働けるなら、きっと楽しい。」
そんな気持ちが、求職者の心を大きく動かしたのです。
【事例2】ボードゲーム部が社員をつなぐIT企業
あるIT企業では、毎週金曜の夜に「ボードゲーム部」が開かれています。
求人にも「ボドゲ好き、歓迎!」と明記されており、これを見たエンジニアが、他社に内定していたにもかかわらず、こちらの会社への入社を決めた例もあります。
この企業では、「遊びの感覚を大切にする社風」が根付いており、入社後も社員同士が自然と打ち解け、チームワークが育っていきます。
“俺もそれやってる!”の共感が、人を引き寄せる
現在、この会社ではボードゲーム「カタンの開拓者たち」が社内でブーム。
社員たちが週末に集まり、戦略と交渉に熱中しています。
そんななか、ある求職者が求人原稿に「社内でカタンが流行っています」と書かれていたのを見て、こう感じたそうです。
「え、俺もカタン好きなんだけど…なんかこの会社、気になる!」
“俺もそれやってる!”という共感が、会社そのものへの関心を引き寄せた瞬間です。
こうした趣味や社内文化の発信は、似た価値観を持つ人材を引き寄せる力があります。
結果的に、入社後のミスマッチを減らし、定着率の向上にもつながるのです。
【事例3】アニメ好きが集まる印刷会社
ある印刷会社では、社員の半数以上がアニメやマンガ好き。
その社風を活かし、求人原稿に「アニメ同好会、活動中です!」と明記したところ、思わぬ反響がありました。
特に印象的だったのは、ある応募者の言葉です。
「正直、どの会社も似たような求人に見えていたんですけど…“アニメ同好会、活動中”って書いてあって、なんか急に親近感がわいたんですよね。」
「業務内容よりも先に、“この人たちと話してみたい”って思ったのは、初めてでした。」
その応募者は複数の内定先に迷っていたものの、「趣味が共通する人たちと働けるなら、きっと楽しい」と感じて入社を決めたそうです。
“趣味が合う”というたった一つの共通点が、会社の印象を大きく変える――
まさに、ニッチな共感が応募者の心に刺さった瞬間です。
このように、“好き”や“共感”をベースにした情報発信は、応募者との距離を一気に縮め、入社後の人間関係の構築や定着率の向上にもつながります。
求人に「共感のフック」を仕込むメリットとは?
「条件」ではなく「共感」で人が動く――
これが、共感型採用の最大のポイントです。
- 同じ趣味を持つ人と働ける安心感
- 働くイメージがリアルに湧く
- 入社後の人間関係に対する不安が軽減される
- 結果として定着率が向上する
今や求職者は、会社の“中身”を見ています。
人間関係や職場の雰囲気、そして「どんな人と働くのか」が、企業選びの決め手になっているのです。
採用戦略に“趣味”を取り入れる際のポイント
もちろん、何でも趣味を打ち出せばいいというわけではありません。
以下の視点を持つことが大切です。
- 社内にすでにある“自然な文化”を打ち出すこと
- その趣味が「楽しそう」と他者に伝わること
- 押しつけにならず、あくまでも“共感の余地”として提示すること
あなたの会社にも、きっとある“共感の種”
釣り、ボードゲーム、アニメ…。
どれも、特別な制度や高額な設備がなくても、“共感のフック”として強い力を持ちます。
実際にある企業では、社長の趣味だった釣りが採用の武器になりました。
クルーザーという特別な例であっても、ポイントは“共通の楽しみ”があるということ。
もっと身近なところにも、社員が自然と盛り上がっている話題がきっとあるはずです。
それをほんの少し、求人原稿に盛り込んでみるだけで
「この会社、なんか好きかも」
そんなふうに思ってもらえる可能性が、大きく広がるのです。