「土曜に休めないなら辞めます」若手社員に戸惑う現場。どうする?採用・定着のリアル戦略


「え、土曜に休めないなら辞めたいって?」
ある中小企業の部長が漏らした戸惑いの声。最近、若手社員の価値観の変化に戸惑う経営者・管理職の方が増えています。土曜出勤や残業、業務量に対して敏感に反応する若者たち。その背景には、単なる“わがまま”ではない、深い心理と時代の流れがあります。

今回は「土曜に休めないなら辞めたい」と言う若手社員の心理を紐解きつつ、企業側がとるべき採用・定着のリアルな戦略について考えてみましょう。


目次

なぜ若手社員は「土曜出勤」に強く反応するのか?

いまの20代・30代前半の若手社員は、「プライベートの充実」や「心の余裕」を非常に重視します。労働時間=働く意欲、という昭和的な価値観ではなく、「効率」と「成果」を大事にします。

「土曜も働くなんてブラック企業だ」
「ワークライフバランスが取れない職場では続かない」

そう考える若手が多いのは、育ってきた環境や社会の価値観が影響しています。SNSで他人のライフスタイルを簡単に見られる時代。誰かが週末にキャンプや旅行を楽しむ投稿を見るたびに、「自分はなんのために働いているのか」と疑問を抱くのです。

この背景を理解する手がかりとして有効なのが、心理学者マズローの「欲求5段階説」です。若手社員たちは、生活のために働く“生理的欲求”や“安全欲求”の段階を超えて、

  • 所属と愛の欲求(プライベートでのつながりや人間関係)
  • 承認欲求(自分の生き方や価値観の尊重)
  • 自己実現欲求(自分らしさの追求)

といった、より高次の欲求を満たしたいと考えているのです。


「辞めます」と言われたとき、どう対応するか

若手社員から「土曜に休めないなら辞めます」と言われたとき、経営者や上司はつい感情的になってしまうかもしれません。しかし、ここで大事なのは“聞く姿勢”を持つこと。

「なぜそう思うのか」
「何に一番ストレスを感じているのか」

まずは丁寧にヒアリングして、本人の価値観や背景を理解することが第一歩です。そこから、会社として譲れるところ・譲れないところを明確にし、すり合わせの余地を探るのです。

また、制度や文化として土曜出勤が必要なのであれば、その理由や背景を丁寧に説明し、「納得感」を得る努力が必要です。納得できれば、若手も一定の理解を示すことが多いのです。

ここで参考になるのが、ハーズバーグの「動機づけ・衛生理論」です。彼は、仕事における満足と不満は別の要因によって生じるとしました。

  • 土曜出勤の有無勤務時間の長さは「衛生要因」—— これが整っていないと不満になりますが、整っただけでは意欲は高まりません。
  • 一方で、柔軟な働き方裁量のある仕事成長機会などは「動機づけ要因」—— これがあることで人は内発的にやる気を出し、定着するのです。

つまり、単に「休みを増やせばいい」という話ではなく、「その人が納得して主体的に働ける環境」を整えることが本質なのです。


採用・定着のリアル戦略

  1. 働き方の柔軟性をアピールする
     採用段階で「うちは柔軟な働き方を取り入れています」と伝えることは、今や大きな魅力です。週休2日制を徹底する、フレックスや在宅制度を整えるなど、目に見える形で発信しましょう。
  2. カルチャーフィットを重視する
     スキルや経験も大事ですが、それ以上に「会社の文化に合うかどうか」を見る視点が重要です。価値観のマッチングを重視した採用プロセスを設計しましょう。
  3. オンボーディングでの価値観共有
     入社後すぐに、会社のミッションや価値観、働き方のスタンスを丁寧に伝える機会を作りましょう。ズレがある場合は早めに対話し、互いに理解を深めることが定着につながります。
  4. 心理的安全性を高めるマネジメント
     「辞めたい」と感じる前に相談できる環境づくりが何よりも重要です。否定や叱責ではなく、まずは受け止める。心理的安全性のある職場が、人を育て、定着させます。


価値観が多様化する現代において、「若手がわがまま」と切り捨てるのではなく、違いを受け入れ、対話を通じて共に成長する関係を築くことが求められています。

「土曜に休めないなら辞めます」— その言葉の奥にある“本音”に耳を傾けたとき、見えてくるものがあるはずです。採用も定着も、まずは理解から。心理学の視点を活かした柔軟で実践的な対応こそが、これからの人材戦略の鍵となるのです。

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