アホになれる上司は、なぜ人を動かすのか?社員が本音を話したくなる“ゆるいリーダー”の心理学



なんであの会社は、あんなに雰囲気がいいの?

採用や教育研修で、いろんな会社さんにおじゃまする中で、
毎回感じることがあります。

「この会社、なんか空気いいなぁ」
「みんなが本音でしゃべってるなぁ」

そう思える会社には、ある共通点があるんです。
それは、トップやリーダーが“ちょっとアホっぽい”こと。

もちろん、本当のアホではありません。
「アホになれる器を持ってる人」、ということなんです。


目次

「ちゃんとしなきゃ」と思うほど、場が固くなる

人の上に立つと、誰しもこう思うようになります。
「ちゃんとしなきゃ」
「頼られる人でいないと」
「わからないって言ったらダメなんじゃないか?」

私も、かつてはそうでした。
社労士だから、質問されたら即答しないといけない、
誰よりも知っておかなきゃいけない——そうやって“賢く見せる”ことに、ずっと気を使っていたんです。

でも、そうやって賢くふるまえばふるまうほど、
まわりの人はだんだんと黙っていくんですよね。

「これ言っても、どうせ正論返ってくるやろうな」
「社長の中では答え決まってそうやし…」
って、みんな“様子見”になる。


アホになれる人は、場をゆるめられる人

一方で、うまくいっている会社では、
トップが「え? それどういうこと? 全然わかってへんわ〜」なんて、
ニコニコしながら部下に教えてもらってたりする。

でもその人が、“ほんまにわかってへん人”かというと、そうじゃないんですよね。

「実力も経験もあるのに、そこを見せつけない」
「知らんふりができる」
これが、いわゆる“愚者の演出”なんです。


心理学で読み解く「愚者の力」

心理学の世界では、この“ゆるさ”が職場に安心感をつくるとされています。

●心理的安全性
上司が完璧で、なんでも即答するような人だと、部下は失敗を見せにくくなる。
でも、ちょっと抜けてたり、「これ、どう思う?」って聞いてくれる上司なら、
「ここなら自分の意見も言ってええんや」って、安心できる。

●自己呈示理論
人は社会の中で「どう見られるか」を意識して演じている。
上司が“かっこつける”と、部下も“かっこつける”しかなくなる。
でも上司が「演じない」と決めると、みんなが自然体になれる。


司馬遼太郎も語った「愚者の演出」

司馬遼太郎の『坂の上の雲』には、こう書かれています。
「戦国時代の大将が大きな力を発揮するとき、必ずそこに“愚者の演出”がある」

本当は知っているのに、あえて知らないふりをする。
先に答えを言えるのに、「それ、君の考えはどうなん?」と聞く。

これは“部下の中にある力”を信じているからこそできる態度です。
そして部下も、「自分の言葉を受け止めてもらえる」と感じて、自然と前に出ようとする。


アホになれるけど、アホではない——この絶妙なバランス

関西で「アホ」というと、ちょっと笑えるけど、あったかい言葉ですよね。
「かわいい」「憎めない」「気さくでええ人」みたいなニュアンスも含んでいます。

だから、“アホになれる上司”というのは、
「抜けてるけど憎めない」「でも、いざというときはちゃんとしてる」
そんな絶妙なバランスでチームの空気を作っている人なんです。


アホ最強説、実感しています

かつての私も、「ちゃんとしなきゃ」「できる人に見せなきゃ」と、一生懸命に“装って”いました。
でも、そうすればするほど場は固くなって、周囲もなんとなく様子見を始めてしまう。

最近ようやく、「アホは最強!」と思えるようになってきました。
ちゃんとできることは、周囲ももう知ってくれている。
だったら、自分まで肩に力を入れる必要はないのかもしれません。

今は、ゆるゆる。
ちょっとゆるんでるくらいが、いちばん心地よくて、
いちばん周りの力を引き出せる気がしています。


あなたの「ゆるさ」は、誰かの勇気になる

もしあなたが今、
「もっとしっかりしないと」
「上司らしくいないと」
と力が入っているとしたら——

ちょっと力を抜いて、「アホになってみる」のもひとつの手かもしれません。

「なんやこの人、親しみやすいな」
「こんなふうに言っても大丈夫なんや」
そう思った誰かが、思いがけず大きな力を出してくれるかもしれません。

誰かの成長のきっかけは、意外と“ゆるさ”の中にある。
そんなリーダーシップも、あっていい時代なのだと思います。

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