面接に来ないのは“ナメてる”んじゃない。行動経済学で読み解く、フェードアウトと“即決される会社”の条件

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「ドタキャン=やる気がない」と思っていませんか?

採用現場でよくある悩みのひとつに、

  • 応募はあるのに連絡がつかない
  • 面接の約束をしたのに当日来ない
  • 既読スルーで自然消滅…

という「面接ドタキャン」や「フェードアウト問題」があります。

せっかく求人に反応があったのに、こんな結果になると、
「ナメてるの?」「最初からやる気なかったんじゃ?」と感じてしまうのも無理はありません。

ですが実はこの行動、求職者の“やる気のなさ”というより、
心理学的に説明がつく「人間の自然な反応」である可能性が高いのです。


フェードアウトの裏にある、3つの心理メカニズム

1. 損失回避バイアス

人は「得をすること」より「損をしないこと」を優先する傾向があります。
これは行動経済学でいう「損失回避バイアス」と呼ばれるものです。

面接を受けて落ちるより、最初から行かないほうがラク。傷つかない。失敗のリスクを避ける。
つまり、面接をドタキャンするのは「ナメている」のではなく、
本人の中では“自分を守るため”の行動になっているのです。

2. 即時報酬バイアス

「今この瞬間にラクしたい」「面倒を避けたい」という感情が、
将来的に得られるメリットよりも優先されてしまうことがあります。

面接の準備、日程調整、緊張感…。
それより「今日は疲れてるし、もういいや」が勝つ。

面接当日の朝、何となく行きたくなくなってしまう。
これも、誰にでも起こりうる“即時報酬バイアス”のなせるわざです。

3. 選択のパラドックス

求人サイトでは数十社が並び、気軽に応募できる時代。
選択肢が多すぎると、かえって人は「最初に感じがよかった会社」や
「一番に連絡をくれた企業」に決めがちになります。

比較検討に疲れ、「ここでいいかな」と思った時点で、
他の面接はもうどうでもよくなってしまうのです。


求職者は「1社目で決めがち」なのが現実

最近の若年層は特に、
「感じの良かった1社目」「最初にレスポンスがあった会社」で即決してしまう傾向があります。

これは以下のような心理が関係しています:

  • 初頭効果
    最初の印象がその後の判断を大きく左右する
  • 決定疲れ
    いくつも面接を受けるのがしんどく、早く終わらせたい
  • 一貫性バイアス
    「ここでいいかも」と思ったら、そのまま突き進みたくなる

面接率・内定率を上げる“スピード対応”のすすめ

では、企業側ができることは?

大切なのは、応募者の「心理の流れ」に寄り添い、
最初の1社目になることです。

具体的には

  • 応募が来たら、できれば1時間以内に返信する
  • 面接候補日は、翌日〜3日以内で複数提示する
  • 面接後の合否連絡は、遅くとも翌営業日中に伝える

これだけで、求職者の「この会社、感じいいかも」という印象を得られやすくなります。
スピード対応は、“好印象”を勝ち取るための最大の武器です。


「ナメてる」のではなく「自衛している」のかもしれない

面接に来ない。
連絡が取れない。
ドタキャンされる。

それは、やる気がないとかマナーが悪いというだけではなく、
「自信がない」「失敗したくない」「選ぶのに疲れた」という
求職者なりの“自衛本能”の現れかもしれません。

だからこそ企業側は、「どうしたら来てくれるか」だけでなく、
「どうしたら安心して選ばれるか」を考えることが大切です。

“選ばれる会社”になるためには、スピード、安心感、そして人間らしさ。
この3つが、求職者との最初の一歩をつなぐカギになります。

「人間らしさ」はなぜ今、採用活動に必要なのか?

応募者が面接に来ない、連絡がつかない、という現象の背景には、
「この会社、どうせ事務的に扱われるだけだろうな」
「ちゃんと話を聞いてもらえるのかな」という“見えない不安”が潜んでいます。

SNSで企業の口コミを検索したり、面接での対応を繊細に観察していたりと、
今の求職者は企業の“中の人の温度感”を敏感に見ています。

そこで求められるのが、企業側の「人間らしさ」です。


人間らしさを出す、3つの具体的な方法

1. 文章に温度を込める

テンプレ返信や一括送信の文面ではなく、
「ご応募ありがとうございます!お会いできるのを楽しみにしています」といった、
一言の“やわらかさ”や“対話の姿勢”が、応募者に安心感を与えます。

形式的なメッセージより、「人が書いてくれた」と感じられる文面の方が、
「ちゃんと対応してくれそう」と思ってもらえる確率が高くなります。


2. 面接を“尋問”ではなく“対話”にする

「なぜ辞めたんですか?」「前職では何を?」と詰問のように進む面接では、
応募者は身構えてしまいます。

それよりも、
「これまでどんな働き方をされてきましたか?」
「どんなことが得意ですか?」と、関心と敬意を持って聞くことで、
“信頼関係の入り口”ができます。


3. 感謝と気づかいを、言葉にして伝える

面接後、「本日はありがとうございました」と伝えるだけでも印象は変わります。

さらに「ご足労いただきありがとうございました」「遠方からありがとうございました」と、
一人ひとりへの小さな配慮を言葉にできると、求職者にとっては「この会社、ちゃんとしてるな」と感じられるポイントに。

人間らしさとは、派手なことではなく、
「あなたを一人の人としてちゃんと見ています」という“視線”を伝えることなのです。


「人間らしさ」が採用成功につながる理由

今の求職者は、企業を選ぶときに「待遇」だけでなく、
「この会社で安心して働けるか?」「人として扱ってもらえるか?」を重視しています。

つまり、“会社を選ぶ”というより、“人を選ぶ”時代。
その中で「この会社には人のあたたかさがある」と感じてもらえた企業だけが、
最終的に選ばれていきます。

だからこそ、スピードと並んで、
人間らしさを持った対応こそが、他社との大きな差別化になるのです。

求職者だって、最初からドタキャンしたいわけじゃない。
「もし自分だったら?」と想像できる採用こそが、人を惹きつける力を持っています。

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