「社員のモチベーションを上げたい」「長く働いてもらいたい」
そんな思いから、年に一度のボーナスや記念旅行など、“ドカン”としたご褒美を用意する会社は少なくありません。
でも、実はそれよりも大切なのが、「日々のじわじわ」です。
感情は“回数”に反応する
心理学では、「頻度の法則(frequency theory)」という考え方があります。
人は、大きな出来事よりも、小さなポジティブな経験が繰り返されることで、「この人(会社)は自分を大切にしてくれている」と感じやすくなるんです。
恋愛でも同じことが言えます。
「プロポーズの指輪は豪華だったけど、ふだんは全く気にかけてくれない」よりも
「サプライズなんてないけど、毎朝コーヒーを入れてくれる」人の方が、長く一緒にいたくなるのはなぜか。
それは、“想われてる感”が日常にあるからです。
「ドカンと一発で済ませたい」男性心理
今日、ある男性経営者さんとお話していて、こんな言葉が印象に残りました。
「せやねん、男はドカンとプレゼントしたら、それでええと思いがちやねん」
「だから、奥さんとうまくいけへんねんなぁ」
とてもリアルで、思わず笑ってしまいました。
でもこの一言、実は“職場”にも通じるんですよね。
経営者としても、「ちゃんと給料払ってるし」「福利厚生も整えてるし」と思いがち。
でも社員の心が離れていくのは、日々の小さな“配慮”や“関心”が感じられないときだったりするんです。
福利厚生でも“じわじわ”が大切
今日、別の経営者さんと福利厚生制度の強化についてお話していたとき、こんなアイデアが出ました。
「5年目に、ドカンと連休とかなり高額な旅行券をプレゼントしたい」
もちろん、こうした“節目のご褒美”も素晴らしい取り組みですし、モチベーションに火をつけるきっかけになります。
でも、それと同時に考えたいのは、5年目までの間に“じわじわ”があったか? ということ。
社員が「5年働こう」と思える背景には、やはり日々の小さな“承認”や“つながり”の積み重ねがあります。
5年目の旅行券が嬉しくなるのは、毎日ちゃんと見てくれていた、関わってくれていた、その“下地”があるからこそ。
社員にも「想われてる感」が必要
これは、社員に対しても全く同じです。
・「朝のあいさつを必ずする」
・「困ってそうな時に声をかける」
・「ありがとう、を口にする」
こういった“1万円のギフト”ではなく、“ちょっとした一言”が、感情の貯金になります。
そして、この感情の貯金がたまっていくと、
- 働きやすさを感じる
- 離職リスクが下がる
- 多少の困難があっても「ここで頑張ろう」と思える
という、経営者にとっても大きなメリットを生むのです。
行動経済学でも証明されている
行動経済学の「プロスペクト理論」では、人は“得られる喜び”よりも“失う痛み”を強く感じる傾向があるとされています。
だからこそ、毎日の小さな「嬉しい」や「ありがとう」があると、それを失いたくなくなり、結果的に会社への愛着が高まるんですね。
つまり、“毎日のちょっといいこと”を積み重ねる会社は、自然と社員の心をつかみやすくなる。
感情は、戦略になる
「社員の定着率を上げたい」と考えるなら、高額な報酬制度よりも、“感情に働きかける仕組み”をつくる方が、実はコスパが良いのです。
たとえば
- 「ありがとうカード」を社員同士で送り合う
- 月1回の「ちょっといいこと共有タイム」
- 毎朝3分の“雑談タイム”を設ける
- 月1回のスイーツデイ(当番制で好きなものを買ってきてみんなで食べる)
- 月1回のランチ会
- 誕生日プレゼント
これらはすべて、“じわじわ1000回”に該当します。
大きなインセンティブよりも、 日々の小さな積み重ねが、組織の「人間関係の質」を底上げする。
そしてそれが、社員の定着やエンゲージメント向上、さらには業績にもつながっていくのです。
「定着率を上げたいけど、何をすればいいか分からない」 そんなときこそ、“感情の貯金”を始めてみませんか?
結構、簡単に取り組めることも多くないですか?
ひとつでも、ふたつでも、今日から、ぜひ取り入れてみてください。