損切りができない社長へ。追証に学ぶ“判断ミス”の心理構造

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■ 株価大暴落。追証発生。心が乱れる日

2025年4月某日。
トランプ元大統領の「関税引き上げ」発言を受け、世界の株式市場が大きく反応しました。
日本市場でも主要指数は前日比で急落。SNSには「追証きた」「口座が真っ赤」といった投稿があふれ、投資家たちの不安が一気に噴き出しました。

追証(おいしょう)――
それは、信用取引などで損失が拡大し、証券会社から「追加保証金を入金してください」と請求される状態のこと。
要するに、“損失を確定したうえで、さらに現金を差し出さなければならない”という最悪の状況です。

でもこの「追証」、実は私たち中小企業経営者にとっても決して他人事ではありません


■ ビジネスにも潜む“追証的判断ミス”

追証は、損切りできなかった人に訪れる「強制的な損失確定」
実は、経営の現場でもこれと同じことが起きています。


・やめどきを逃した新規事業

→ 赤字続きでも「ここまで投資したし、もう少し…」と先延ばし。


・どう見ても合っていない社員

→ 「解雇はかわいそう」「今変えるのは面倒」と放置。


・効果が出ない広告・採用手法

→ 「とりあえず今月も続けようか…」の繰り返しで予算だけが減っていく。


こうしたケースの多くは、「ここでやめたら損した気がする」という感情によって、判断を先延ばしにしている状態。
追証と同じで、放置すればするほど損失は拡大します。


■ なぜ私たちは“損切り”ができないのか?

ここで少し、心理学の視点を加えてみましょう。


●損失回避バイアス

人は「得をすること」よりも、「損をしないこと」を強く望む傾向があります。
つまり、すでに出た損失を確定させる=精神的にとても辛い。


●正常性バイアス

「まあ、そんな大ごとにはならないだろう」
「まだ大丈夫なはずだ」
自分にとって都合の悪い情報を軽く見積もる心理。
→ 社内トラブルや社員の異変にもこれが起きます。


●コミットメント効果(サンクコスト効果)

お金・時間・労力をかけたものほど「やめにくい」心理現象。
「ここまで来たんだから…」で損失から抜けられないのです。


■ 判断を“感情”から“構造”へ

経営でも投資でも、判断ミスの多くは「感情」によって引き起こされます。
でも、追証のような強制損失が起きてしまった後では、もう修復がきかないこともあります。

だからこそ、感情を切り離し、「構造的に判断する仕組み」を経営に取り入れることが重要です。


■ じゃあ、どうすればいい?


✅① 事前に“撤退ライン”を決めておく

→ 例:3ヶ月連続で成果が出なければ撤退/明確な数値で判断する


✅② 「この判断は、誰のため?」と自問する

→ 自分のプライドや感情を守るための決断になっていないか確認


✅③ 損失=失敗と決めつけない

→ 「学びに変える力」を社内に見せることで、社員も挑戦しやすくなる


■ 切ることは、守ること

追証を経験した投資家の多くが、その後「リスク管理の大切さ」を学びます。
経営者もまた、判断を誤った経験を通して、会社と人を守る視点を育てていくものだと思います。

「続けること」は素晴らしい。
でも、「やめる勇気」も、同じくらい尊い。

損切りできる社長は、会社にとって最も冷静な守護者です。

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